角刈伝説!会員番号0番波多場四郎の軌跡

第2話-波多場四郎松ヶ崎大学空手部にあらわる

19〇〇年4月1日。京都市北部松ヶ崎区の東の端。満開の桜並木の間を北から南へ穏やかに流れる一乗寺川の最も川幅の狭い所にかかる木造の橋。今にも崩れ落ちそうな通称泪橋を川端通りから西へと渡ると松ヶ崎区立松ヶ崎大学はある。

泪橋同様今にも崩れ落ちそうな木造校舎が密集するキャンパスが特徴の区立松ヶ崎大学。周辺住民からは松枯れ木大学と揶揄されているが、その枯れ木のようなオンボロ校舎の中では実は世界最先端の恐ろしい科学研究が行われているとの噂もある理工系の謎の大学、でもある。

そのオンボロキャンパスの東北に位置する木造体育館のさらに東北、キャンパスの最東北角に存在する、キャンパス内の全建物の枯れ木ぶりの中でも群を抜いた枯れ木ぶり、枯れ木というよりはもはやガレキに近い恐ろしい木造建築物が存在する。そう、これこそ区立松ヶ崎大学が、唯一誇る伝統空手道部の武道場である。

「唯一誇る」というのは、この区立の枯れ木のような大学の体育会運動部にあって、空手道部は過去に全国優勝の実績を持つ唯一の部なのである。

「おらららああああ1回っっっ!あと55回じゃあ」

四回生の主将安達の怒号が武道場の外まで響き渡る。一週間後に入学式を向かえる新入生のうち空手部入部希望者が、さっそく松ヶ崎大学空手部恒例の「拳立て伏せ100回」な洗礼を容赦なく受けて苦悶の真っ只中にいる。

「安達先輩、希望者10名やったんすけど、一名まだ来てません。」

「ああっ、んなやついらんわ。ほっとけぇ!!」

「いや、センパイそれがですね・・・」

波多場四郎三回生木之下から手渡された一通の手紙。なかなかの達筆である。しかしそれを見た安達の顔筋の変化を見て木之下はもはや一切口を開かない。そのとき立て付けが悪すぎて一周回ってスムーズに開く横開きの木枠の戸が勢い良く盛大な衝撃音とともに開く。

「?!」

全員が一斉に入り口を見た。そしてそれは、これから始まる伝説の始まりを見た瞬間でもある。

※この物語はフィクションです。自在する人物・団体・事件・事実等とは一切関係ありません。