空手とウオーミングアップ

愛読している空手雑誌「JK Fan」さんの今月号に、ウオーミングアップについての記事がありました。そこで不肖清水がさらにレベルアップにウオーミングアップについて解説を入れてみたいと思います!

  1. ウオーミングアップの目的
    1. 心拍数を上げる
    2. 関節稼動域を広げる – ダイナミックフレキシビリティー
    3. 神経反応を高める
  2. ウオーミングアップの実践メニュー
  3. 空手とストレッチ

ウオーミングアップの目的

なんのためにウオーミングアップ、もしくは準備運動をやっていますか?体をほぐす?怪我防止のため?いろいろ言われていると思いますが、現在では「機能的ウオーミングアップ」として目的、手段が明確になってます。

1:心拍数を上げる

まずウオーミングアップ第一の目的は、「心拍数を上げる」ことです。心拍数を上げる事で全身筋肉への血流量を増やし筋肉と内部温度を上げます。筋温が上がることで初めて筋肉の柔軟性が高まって行きます。つまり筋温が上がっていない状態でスタティックストレッチ、いわゆるストレッチをやっても筋肉の柔軟性は上がりません。へたすれば逆に筋肉や腱を痛める事もあります。

2:関節稼動域を広げる – ダイナミックフレキシビリティー

関節稼動域を広げるというのは、具体的には「肩関節」「肩甲骨」「股関節」の動く範囲をできるだけ大きくするということです。これらの関節がスムーズに動くことで体幹の安定性・バランスを維持できるのです。

例えば膝を上げた時に上体が後に傾いていませんか?片方の腕を上げた時に体幹が反対に傾いていませんか?そして「関節稼動域を広げる」=「周辺の筋肉の柔軟性を向上させる」ということです。空手に限らずどんな競技、運動、あるいは日常生活でも動いた時に筋肉の柔軟性=動的柔軟性(ダイナミックフレキシビリティー)が発揮できなければ意味がありません。

3:神経反応を高める

いわゆる「反射神経」という神経は存在しません。そうではなく目や耳と脳をつなぐ感覚神経と、脳と筋肉をつなぐ神経の「神経伝達速度」を高めるということです。

では実際にどのようなことをウオーミングアップでやけばいいのか?!

ウオーミングアップの実践メニュー

まず心拍数を上げるために、軽いウオーキング→ジョギング→ランニング、というふうに段階的にペースを上げて心拍数を上げて行きます。しんどくなるまで走る必要はありません。あくまで筋温を上げるためのランニングだから、おしゃべりできるくらいゆっくり軽くでいいのです。5から10分くらい。

JK Fanの記事ではこのランニングの後寝そべってスタティクストレッチ→ダイナミックストレッチとなっていますが、せっかく心拍数上げた後に寝そべってスタティックではすぐ心拍数が下がってしまいます。そうではなく、ランニングに続いて、いやランニングしながら肩甲骨を動かす、腕を回すなどして上半身のダイナミックフレキシビリティーを上げて行きます。すでに書いたように立って動きながらの動的柔軟性を向上させる必要があるのです。

ランニングにつづいてステップしながらニーアップ(もも上げ)やランジ動作など、まずは膝を曲げた状態で股関節を動かして太ももの前の大腿四頭筋と後の筋肉ハムストリングスの動的柔軟性を高めます。特にハムストリングスは空手はもちろんどんな競技でも肉離れしやすい筋肉です。

空手で気になるのはやはり蹴りでの「膝裏」でしょうか。よく準備運動で屈伸とか膝をグイグイ押して”膝裏”を伸ばそうとする人がいますが膝裏はのばしてはいけません。柔軟性が必要なのはハムストリングスです。ハムストリングスの柔軟性と筋力が低いと膝裏付近の腱や膝葢筋などにストレスがかかってくるのです。

そこで膝を曲げた状態でのアップで十分温まってから、次は膝を伸ばした状態で脚を振り高く上げます。連続して左右交互に徐々に高さを上げて行きながら10回ほどやります。こういう反動をつけてのダイナミックストレッチを「バリスティックストレッチ」と言います。JK Fanの記事にもありますが、筋肉が伸ばされると縮もうとする反射作用、伸張反射を刺激する効果もあります。しかし事前に十分温まった状態で行わないとやはり筋を痛めます。ダイナミックストレッチ、バリスティックストレッチと明確に区別するのではなく強度の高いダイナミックストレッチととらえた方がよいです。

さらに競技特性に合わせた、空手なら空手に必要な動きをとりいれダイナミックフレキシビリティーを高めて行きます。この時に、合図に反応して動くなどの工夫をして神経反応を高めて行きます。

空手とストレッチ

ちなみにスタティックストレッチ(静的ストレッチ)、いわゆる止まったまま伸ばすストレッチはこの伸張反射を抑制するのが目的なので、練習前に行うのは適切ではないとも考えられています。

前述したように、空手や運動に大事なのは動的な柔軟性です。動的な柔軟性がなければバランスもくずしやくなり、それが怪我につながっていくのです。ダイナミックストレッチで神経を刺激する事で筋力も高まり体の安定性も高めます。ちなみに私は開脚とか脚伸ばして長座前屈とかぜんぜんできませんが、上段跳び後ろ回し蹴りとかできます。試しに一連のウオーミングアップを20分ほど行った後にスタティックストレッチをやってみてください。適切にウオーミングアップができていれば、普段よりグーンと伸びやすくなっているはずです。スタテッィクストレッチはクールダウンや疲労回復のためにやるとよいです。

他にもいろいろありますけど、文章だけでは伝えられないこともあるのが残念です。先述したように、腕脚を動かしている時に体幹が傾いたりしてないか確認することも大事です。正しいウオーミングアップは体幹トレーニングの基礎にもなっているのです。今までの、くっしーん、しんきゃーく、ぜんごー、てくびあしくびー、あきれすけーん、などのいわゆる備運動は、「機能的ウオーミングアップ」になっているでしょうか?ちなみにアキレス腱は伸びません(^▽^;)

空手道マガジンJKFan2018年2月号